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渡西を繰り返し深めたフラメンコの世界

私がフラメンコ舞踊教室の門を叩いたのは27歳の時でした。佐藤佑子・エンリケ坂井先生の“スタジオカスコーロ”です。フラメンコはカンテ(歌)だ、という、今では当たり前に知られていることが、まだそんなに知られていなかったあの頃、スタジオカスコーロにはカンテがありました。

週に1回の趣味のはずが、いつの間にか夢中になり、31歳の時にスペインへ。マドリー、セビージャではレッスンに明け暮れる日々、最後に居を移したへレス・デ・ラ・フロンテーラで、何故かこの町のフラメンコにただただ心奪われ、自分が踊ることより何より、しっかりとファンになっていました。毎日へレスのブレリアを聞かずにはいられない、そんな自分に驚きワクワクしたのを覚えています。それまでは、27歳から舞踊を始めたスタートの遅さをなんとかしたくて、上手に踊りたくて、もがいていただけだったのかもしれません。

約2年半のスペイン生活の後、東京に戻り、さあこれからどうしよう、大好きなブレリアはどこにもない。そんな時、ブレリアを教えて欲しいという人が少しずつ私の周りに集まって来ました。ないことを嘆くより自分でやってみよう!とばかり、向こうで見聞きしたブレリアはこんなふうだったよ、という手探りのレッスンが始まりました。とは言っても、もちろんヘレスの人達のように出来るわけはありません。しかし、肌で覚えたこと、記憶に染み込んだ音、動き、それらのものを総動員して、レッスンはなんとか展開していきました。悩み迷いながらも、試行錯誤し、そしてそれを抱えて向こうに行くと、またさらなる発見がある、ということを繰り返していたと思います。

今はへレスのブレリアという言葉も浸透し、実際にへレスに行って、ヘレスのコンパスを体感する人や、またヘレスのアーティストが日本に来る機会も増えました。約20年前にブレリアクラスを始めた頃に比べたら、フラメンコ自体がぐっと近くに感じられるようになり、時の流れをしみじみと感じます。

へレスへ行き、かの地の空気を吸い、生きたフラメンコに触れ、そのことが今も私の踊りのエネルギーになっています。しかし、私が生活するここ日本で、フラメンコから与えられたたくさんの感動を、舞台活動、教授活動を通して伝えることが出来たら、それこそが、この上ない喜びです。

私を踊りへと向かわせてくれたたくさんのフラメンコへ、心からの感謝をこめて。

Profile プロフィール
  • 福島県会津若松市出身。(「福島民報」(2005・5・13)にフラメンコ活動の記事が掲載されました。 >>掲載記事はこちら
  • 会津女子高等学校(現葵校)卒業後、日本大学芸術学部入学。
    同大学卒業後フラメンコに出会い、佐藤佑子に師事。
  • 1992年 渡西。ラ・トナ、マヌエル・ベタンソ、アナ・マリア・ロペス、アンヘリータ・ゴメス等に師事。
  • 1994年 帰国。ブレリアクラスを皮切りに教授活動を始める。
  • 1998年 再渡西。ローリー・フローレス、アンドレス・ペーニャ、マリア・デル・マル・モレノ等に師事。
  • 1999年 東京中野にエストゥディオブレーニャ設立。
    その後も渡西を繰り返し、メルセデス・ルイス、ソラジャ・クラビホ、コンチャ・バルガス、ペペ・トーレス、アンヘリータ・バルガス等に師事。
  • 2004年 ヘレスより、ディエゴ・デ・ロス・サントス“ルビッチ”、ドミンゴ・ルビッチ、ホセ・ルビッチ、ファニジョーロを招聘し、第一回大沼由紀舞踊公演“Esponta'nea”~フラメンコ、自然発生的な~を行う。
  • 2005年 “Esponta`nea” ~フラメンコ自然発生的な~ が、スペイン舞踊振興マルワ財団の助成対象作品に選ばれ、“Esponta`nea Ⅱ”として再演を果たす。
  • 2007年 マドリッドフラメンコフェスティバル“SUMA FLAMENCA”に、カンタオール瀧本正信氏、ギタリスト俵英三氏と共に出演。
    へレスより、ホセ・ガルべス、イスマエル・エレディア、マヌエル・カンタローテを招聘し、第三回大沼由紀舞踊公演“Esponta`neaIII”~フラメンコ、自然発生的な~を行う。
  • 2008年 DVD「自宅でクルシージョ7-息づかいを身体へ」(株式会社パセオフラメンコ)発刊。
  • 2009年 2004,2005年の公演ダイジェスト版DVD「Espontanea」発刊。
  • 2013年 ジャズミュージシャンを率いての公演「杢」を、渋谷アップリンクファクトリーにて行う。
  • 2014年 舞踏とのコラボレーションによる作品「FABULAE-フラメンコへのオマージュ」を、あうるすぽっとにて発表。
  • 2015年 「Sonora-音の行方」を、野方区民ホールにて発表。
  • 2016年 ヘレスより、トマス・ルビチ、ドミンゴ・ルビチ、ホセ・ルビチ、アリ・デ・ラ・トタを招聘し、第4回大沼由紀舞踊公演EspontáneaⅣ~フラメンコ、自然発生的な~を行う。
    また、この公演が評価され文化庁芸術祭舞踊部門で新人賞を受賞。
    (「福島民報」(2016・12・28)に受賞の記事が掲載されました。 >>掲載記事はこちら
  • 舞踊家として活躍する一方、自身のスタジオで後進の指導にも力を注ぎ、また全国各地でのクルシージョも積極的に行っている。